雨後雨

いつも降っています。日差しがあっても。


暑いので涼しい話を。

登攀要素を含んだ冬山登山の装備の話です。

歩きを主体とした縦走との違いです。

 

ますはテントです。

これは使用しません(バッサリ)。

念のためにツェルトは携行しますが基本的には雪洞泊です。

寝袋は厳冬期のみ羽毛150~250g程度の物。

残雪期はシュラフカバーのみです。

かなりの寒気が予想される時はちょっと贅沢をして

シュラフカバー+インナーシーツ。

マットはエアーで膨らます半身用の一番薄いタイプ。

可能であればザックの背当てを抜いてこのマットを代わりに

使えれば小スペース化出来ます。

下半身は空にしたリュックに足を突っ込んで寝ます。

銀マットは諦めて下さい。

明け方どうしても寒くて眠れない時や完全なビバークになって

しまった時に備えて蠟燭は必携です。私は4時間燃焼の物を

2本携帯しています。ライターは100円のボタンを押すタイプ

では無く昔ながらの石を親指で回すタイプ。これが一番低温下で

信頼できます。

雪洞を掘るためのスコップは超軽量タイプかピッケル

装着出来るブレードのみのやつを使用している方が多いです。

スコップは雪に埋めてアンカーとしても使えますね。

食器はジフィーズとインスタントラーメンを作れる小サイズの

鍋一個。蓋がカップになっているのが最適です。

中に250gのガス缶とバーナーを収納します。

材質はチタンが良いですね(お金で軽さを買います)。

私の場合はこれにチタンの先割れスプーン

ガス缶はもし1個だけで接続部に不具合が生じると行動食以外は

なにも食べられなくなってしまいます。

寝袋無しで寝るには就寝前に温かい物を食べる事が必須です。

私は相当切り詰めたい時以外は100gのミニ缶を予備で持って

行きます。実際、雪洞が掘れなかったりした際はこの余分の

燃料を暖房や衣類の乾燥に使って事なきを得たことも一度や二度

ではありません。

行動食はチョコレートやチーズやグミやナッツ。

シャリシャリした薄いビニール(スーパーでお肉とかを詰めるのに

貰えるやつ)に全ての包装を剥がして中身だけ入れます。

一日分で一袋。拳より一回り小さい位でしょうか?

主食は前述した通りジフィーズと袋ラーメン。

お茶とスープは多めに持ちます。停滞の際はこれで食い延ばす

ようにしなければなりません。

念のため申し上げておきますと、日焼け止めとリップ以外の

歯ブラシとかコスメとか街に居る時の様な快適グッズは何も持って

いきません。

タオルは水泳の時に使う超吸収ドライタイプのやつを一枚。

薬は体調に合わせて。

着替えも基本は無し。手袋はインナーとアウターの組み合わせ、

または歩行時と登攀用で使い分けて万が一濡れたり落としたり

した場合でも素手にならない様にします。

ヘッドランプも戦略的にナイト登攀を行わないのなら明るさより

軽さとコンパクトさ重視です。ヘッドランプ以外の照明器具は

持ちません(蝋燭は暖房用)。

と、ここまでかなり厳しいことを書きましたが、

もしあなたが超人的な体力の持ち主で

70リットルのザックに暖かいシュラフや美味しい食材を詰め込んで

20キロの重さを背負って穂高や谷川の岸壁を登れるのならば

こんな苦労をする必要はサラサラ無いのです。

しかし大抵の人は冬季に300mのミックス壁をリードするなら

30リッターのザックが上限となることでしょう。

アイゼンが辛うじて引っ掛かっかりピックの先が今にも弾かれそうな

状況で温かい食事や快適な睡眠を求める登攀者は居ません。

その時に考える事は今背中を引っ張るこの荷物が1gでも軽かったら

それだけです。

冬期登攀は厳しい。

その中で経験を積めば耐えられる様になるのは雪上生活。

どんなにトレーニングしようとも1gの余裕が欲しいのが

登攀そのもの。

削るべきところを削るのにはこのような必然があるのです、