雨後雨

いつも降っています。日差しがあっても。

富士山を滑ろう

 

 

 

キャンプやBBQからアウトドアに興味を持ち始めて

ハイキング的な低山歩き~と言うパターンで登山の世界へ~。

と言う方は多くいらっしゃると思います。

また、登山には興味は無くても、ランニングや自転車なんかを

嗜んでいらっしゃる方には富士山に登ると言うのは日常を一歩

飛び出す良い目標なのだろうと思います。

 

山スキーをやっていますと言うとどんな山を滑るのですか?

と返されることが多々あります。

尾瀬会津の1500~2000m位の山から北アルプスまで色々ですと

答えてもあまりピンとはきてもらえません。

それはそうですよね。

私だって鉄オタさんにE〇〇〇系の車両が~なんて言われても

全然判りませんからw

しかし、ここで富士山も滑りますよと告げると大抵流れが変わります。

えー、富士山って滑れるんですか!!

まあ、そうなりますよね。

山スキーを始める前の私だって同じ反応をしたでしょう。

 

良く、富士山で滑落と言うニュースが放送されますが、

それは冬期の場合です。

流石にこの時期のスキーは無理です(記録はあります)が、

一般的に残雪期と言われる4月から雪渓が溶けてしまう梅雨入り前までは

私の様な一般山スキーヤーにも滑降出来るチャンスが訪れます。

しかし、ここで問題なのが残雪が柔らかくザラメ雪になっている、

つまり転倒しても滑落の危険は少ない状態の日でも、風が吹いて気温が下がれば

例え5合目は半袖の観光客が大勢居る夏日でも7合目から上はあっと言う間に、

それこそ昼過ぎなら30分も経たない内に雪面は氷化してアイスバーンになって

しまいます。そうなってしまったら、下りは絶対に転倒しないで滑るか、

諦めて歩いて降りるしかありません。

何れにしても、雪面がザラメ雪のままの日でも上部ではアイゼン(ブーツに

装着する鉄の爪)が必須となります。ピッケルも出来れば携帯した方が

良いでしょう。

 

実際の富士スキー登山は静岡側(富士宮口)でも山梨側(吉田口)でも可能です。

どちらかと言うと富士宮口の方が登り易く(4~5時間)、吉田口(5~6時間)は

若干、リピーターや上級者が多い気がします。人は静岡側の方が多いかな。

仮に登山日をGW明けの5月第二週の静岡側としますと、雪の多い年なら

5合目駐車場から雪が繋がっています。雪が少ない年ですと最悪8合目までは

富士山特有の溶岩岩の登山道をスキーブーツで歩かなくてはなりません。

スキー板は最初から最後まで担ぐことになります。

人によってはブーツも担いで雪が出てくるまで登山靴やスニーカーで歩く

方もいらっしゃいますが、8合目までなら歩き難くてもスキーブーツで行って

しまった方が私は楽かなと思います。

吉田口は5合目駐車場から、まずは水平に平らな登山道を30分程歩くので

また事情が変わってくるかとも思いますが、結局平らな道はスキーブーツでも

歩けますので、やはり出来れば履き替えはしないで済ます方が結局は

トータルでの疲労は少ない気がします。

 

雪渓に乗ってしまえば後は登るだけ。

風は強いのでウェアは春用よりは冬用寄りのアウター。

紫外線は強烈なのできちんとしたサングラスと強力な日焼け止め必携。

上部は単調なキックステップになるので、アイゼンは早めに装着した方が

良いです。

9合目を過ぎると酸素は薄くなっていつものペースでは歩けません。

人によっては頭痛もします。

高山病は舐めてると簡単に死にます。

無理は絶対にしない方が良いです。

そして首尾良く登頂出来たら午後2時には滑降を開始した方が良いです。

遅くなればなる程、雪面がパックされて硬くなっていきます。

3時過ぎてしまうと段々シリアスな状況になっていきます。

もし、3700mから200m登り返す気力が有るなら火口のお釜の中を

底まで滑ることも可能です。かなりしんどいですけどね。

さて、そんな感じでいよいよお楽しみのスキーです。

滑りに関しては山岳スキーっぽい緊張感があるのは最初だけです。

後はゲレンデ中級者斜面程度の雪渓を滑っていけます。

但し、何度も言いますがそれは天候、気温が安定していてザラメ雪の

状態が続いている時だけです。

特に上部は硬くなってしまうと転倒出来ません。

更に風が吹くと斜面全体がスプーンカットの凸凹鱗状の斜面に

なってエッジも掛からなくなります。

そして、富士山スキーで一番悩ましいのが雪渓上の小石です。

前述しました通り溶岩岩なので、踏んでしまうとスキーのソールと

エッジの被害は甚大です。

少なくても私は下ろしたての新しい板で雪渓を滑ろうとは思いません。

 

 

 

まあ、こんな感じで苦労も多い富士山スキーですが、

やはり日本の最高所に登り滑り降りる。

厳冬期に近い山頂から滑るに従い、心地良い疲労感と春から初夏の気温の

安全地帯に戻って来るストーリー性。

そして、5合目駐車場で食べる焼きとうもろこし。

スキーシーズンの締めくくりには良いシチュエーションです。

 

 

実は私は夏の富士山には登ったことがありません。

もし、混雑した富士山は嫌だと思うのでしたら、しっかりした雪上技術を

身に付けてから残雪の時期にトライするのはお勧めです。

標高や知名度の高さを求めて安易なステップアップの足掛かりとするより、

良い時期、良いスタイルで登れる様になるまで自分の課題を温めておくと

言うのは安全の為にも自分の経験の為にも、そして山の為にも良いことです。