私の母親は小柄で華奢です。
二十歳の時から80代の今まで体重は全く変わらないらしい。
嫁に来てから60代の後半まで、お産と歯医者以外は一度も保険証を
使わなかった人です。
小食で肉や果物は殆ど口にせず、少しの野菜と魚で一日二食。
摂取カロリーが少ないので、睡眠時間も4時間程度。
そんな彼女が70歳を迎えるころ、乳がんになりました。
姉に相談するまで一人で一週間悩んでいたらしい。
病気になったことがないので動揺したのだ。
診断の結果はステージ3。
片方の胸は全摘出で抗がん剤治療が行われた。
父と姉、兄家族にケアされながら治療は終了。
たまたま担当した医師が、乳がんの治療では日本でも指折りの先生
だったことも幸いしたのでしょう。
母は驚異的な回復を見せて医師と家族を唸らせた。
抜けてしまった髪は元通りに生え変わり、リンパへの転移は一切無かった。
5年後のチェックも異常は無く、がんは完治しました。
そして、他人の気持ちには少し敏感になった。
父と母はそれぞれ死んでもおかしくない大病を患いながらも
それぞれにそれを克服して現在は静かに暮らしている。
私はこれから3人の親を送り出さなければならない。
その時のことを想像すると暗澹たる気持ちにもなるが、
いざそうなったら、大抵不思議な力と気持ちが起こるものだ。
しかし、そんな日が来るのは一日でも一時間でも先であって欲しい。
本当に、それが今の時点で一番の望みなのです。